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NATIONAL SURIMI MANUFACTURERS ASSOCIATION

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冷凍すり身業界におけるHACCP導入について

冷凍すり身が開発されたのが昭和36年。今から38年前のことである。
当時まったく新しい水産加工品であった冷凍すり身が魚肉練り製品の原料として有用性が評価されたことから、魚肉練り製品の一大発展につながった。冷凍すり身をしてインスタントラーメンに匹敵する大発明といわれる由縁である。
いまや冷凍すり身は世界各地で生産され、“SURIMI”という言葉が世界共通語となっている。

A)「冷凍すり身」は「魚肉ねり製品」???

冷凍すり身が誕生当時まったく新しいタイプの水産加工品であったが、練り製品の原料として評価されたことから、食品衛生法上「魚肉ねり製品」として分類されている。それ以降、すりみ工場は食品衛生法の規制を受けて営業している訳である。

しかし、冷凍すり身が「魚肉ねり製品」に分類されるものの、それ自体が直接一般消費者に消費されることはなく、中間素材としての特殊性を持った商品である ことは明白である。水産練り製品の製造に際しては加熱調理を伴うこともあり、開発されてから今日までの38年間に冷凍すり身が原因となる微生物性食中毒の 発生は皆無である。勿論、この間に行われたすり身製造に関する管理努力、すなわち食品衛生法を基本とした衛生管理や製品の評価を高めるために長年の営業を 通して作り上げたそれぞれの管理システムが冷凍すり身の安全性確保に大きく寄与していた事実を忘れてはならない。

B)HACCPとは???

昨今、HACCP(ハサップまたはハシップと呼ぶ)方式による工程管理が話題になっている。
業界紙誌をみると、「HACCP=衛生管理」との誤解を受けてしまうことがある。HACCPの説明に際して必ず言われるのは、「米国の宇宙開発の中で生ま れた、食品の安全性を確保するための方法」ということであり、これが食品製造上の衛生管理を示したこととの誤解を生むのであろう。
HACCPを和訳すると、(1)原材料から最終製品までに発生するおそれのある危害(Hazard)を(2)見つけて(Analysis)、(3)それを重要な(Critical)(4)管理点(Control Point)として管理する工程管理方式であり、それぞれの頭文字をとってHACCPと呼んでいる。すなわち、HACCPとは製造における管理方式の一つにすぎない。
それでは何故この方法が注目されたのであろうか。

HACCP方式の大きな特徴は、①製造過程において起こりそうな可能性のあることについて検討し、事前にその対策を立てておくこと、さらに②それらの点についてのチェックした記録を残しておくこと である。

安全な製品の提供は食品製造に携わる者にとって当然のことであり、従来も行われている。したがって、殊更に安全性を強調されるのは疑問が残るが、従来の方 法とHACCP方式の違いを見てみると、従来は出来上がった製品の抜き取り検査をして製造工程上の安全性を確認したのに対し、HACCP方式は「予防」と 「記録」を主眼とすることにより安全性を高めようという考え方である。したがって、従来行われている製造管理と全く同じ目的で行われ、ただその手法に新し い要素が加わる程度のことである。工場の管理には「予防」という考え方は当たり前であり、殊更のことはない。しかし、それらのチェックを記録として保管し 万一に備えるという考え方が欧米的であり、消費者に対しより大きな安心感を与えるとして、流通業界が商品仕入の条件に加えようとしているのであろう。

C)HACCPの背景

我が国においてHACCPが強調された背景は何なのであろうか。
その最大の理由は“国際性”にある。前述のように「“宇宙食開発の中で生まれた方式”が食品の安全対策として有効である」と国際機関(FAO/WHO合同 食品規格委員会、略してCODEX委員会)で推奨され、国際規格への導入か検討された。また、EUや米国において水産物の製造基準として採用されているこ とから、世界標準に合わせようとの目的で、平成7年の食品衛生法改正時に我が国にでもその基本概念が採用された(cf.1)
この事実は、HACCPの講習会等でいわれる“O-157事件”とは全く関係ことを示している。たまたま時期的にO-157事件と合致したため、「食品の 安全対策上極めて有効である」と一部に喧伝されてしまい、「HACCP=衛生対策」との誤解を生む発端となってしまった。このことがHACCP導入をビジ ネスチャンスとして利用しようとする輩の温床となったことは食品業界にとって全く不幸なことである。

D)冷凍すり身工場におけるHACCP方式の導入

HACCPの考え方は製造工程全般におよんでおり、現場を知っている者によってしか実行することが出来ない管理手法であることは当然である。製造工程を熟 知した者がHACCP方式を加味することによってさらに有効な管理システムとなり得る訳である。HACCP方式が全く画期的な管理手法と喧伝されることが 多々あるが、実態は従来の手法に追加していくことで導入可能な方式である。新たな問題点の解決のために常に進化していくことが望まれる点で、冷凍すり身誕 生以来、各工場で行われていたことと大差ないと考えている。

現在我が国では、乳・乳製品・食肉製品・容器包装詰加熱殺菌食品・魚肉練り製品の5種類が政令指定され、HACCP方式の導入が行われたり、検討されている。

冷凍すり身の分野においては全国すり身協会が中心となり、平成10年度からHACCP導入にむけた検討会を設置し、その導入方法を研究している。その結 果、HACCP計画や一般衛生管理手段(略してSSOPと呼ぶ)などを作成し、現状施設設備に即した導入が可能であるとの結論を得た。巷間伝わるような多 額の投資をせずとも、充分に導入が可能である。
その根拠は、HACCPという管理方式が従来のすり身工場において行われている製造管理と本質的にかけ離れていないこと、システムの導入が他業種に比較し て容易であることがある。HACCP導入を通して、より安全性の高い冷凍すり身製造を目指している姿勢をアピールし、我が業界が置かれている現状を打破す るための一助にしようという狙いである。

具体的には、検討会でつくられた内容を参考に各工場においてHACCP計画を作成した後、社団法人全国すりみ協会がHACCP方式の導入定着の指導をする こととなる。一定の基準を満たした工場には「社団法人全国すりみ協会HACCP方式工程管理指導認定工場」としての称号を与える予定である。当然ながら、 製造環境の変化にはその都度適時対応し、指導を行うこととなろう。

ただし、この認定は当協会が行うものであることから、対米水産食品輸出を目的とした場合には別に“FDA規則に基づくHACCP製造工場認定”を受けることが必要(cf.2)となる。しかし、その際にも当会にて導入したシステムがその基礎として大いに役立つであろうは充分にご理解いただけるものと思う。

cf.1 総合衛生管理製造過程の承認

平成7年5月に食品衛生法が改正され、任意承認精度の「総合衛生管理製造過程」の中にHACCPの基本概念が採用された。
冷凍魚肉すり身製造業者は食品衛生法第20条の既定により、魚肉ねり製品製造業の営業許可を得なければ営業できない。しかし、食品衛生法第7条3項にある 「総合衛生管理製造過程」は承認制度であり義務化されたものではない。「総合衛生管理製造過程」の導入に際しては、HACCP方式実践に必要な施設設備や 新たな作業が必要となる場合がある。したがって、「総合衛生管理製造過程」の承認を得るには、営業許可を受けた当時と同等もしくはそれ以上の整備を要求さ れる可能性がある。

cf.2 FDA規則に基づくHACCP製造工場認定(対米水産食品輸出)

一般的にいわれているHACCP認定はこれを指している。米国に水産食品を輸出する場合にはFDA規則に基づくHACCP製造工場であることを厚生省ある いはFDAが認めた社団法人大日本水産会からの認定を受けなければならない。この認定を受けるにはFDAのHACCP規則上の施設要件に適合しているこ と、および半年毎に行われる審査をパスする必要がある。

2001.11.01